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【投稿作品】それぞれのラストシーン

たかしんに氏たこ氏あさぎり氏第9幕&あさぎり氏第10幕猫野丸太丸氏 ・うさ氏英明氏フレッシュイア氏

第九幕


原案 joker
作 たかしんに

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背広と云うには皺くちゃの服を着、何日も汗を流していないこの醜い風体で駅に向かう。

奴が言うように身体はオートコンプリート機構で自然と前へと向かう。ああ・・・・・。こんな身体で・・・。

駅のエレベーターに運ばれていると、周りにはしかめ面の集団で一杯だった・・・。

無理もない・・、こんな体臭がしているんだから・・。私は、一目散にこの場を去りたかった・・・。

しかし、私の意思をぶった切り、この身体は進み続ける。この肉塊が満員電車に入り込む・・・・。

 

「げえええええっ!くせええっ!誰だよぉ〜ごみ持ち込んだ奴わぁああ〜!!」  ごみじゃない・・。

「いやぁあああっ!信じられないっ!臭くて鼻が腐りそうよぉー!」  わたしじゃない・・・・

「うっ・・・・・・・、ごええええええ〜!」  わたしの所為じゃない・・・

「うわっ吐きやがったー!てめーこんなとこで吐くんじゃねーよっ!」  わたしの所為じゃない・・

「きゃあああああ!この服高かったんだからねー!反吐でもう着れないわー!」 私の所為じゃない

電車内は一種のパニックになる・・・。この身体の所為で・・・・。もう・・・・死にたい・・・・・・・・・・・。

人は金持ちにも貧乏人にも平等に与えられる二つの物がある。

 

生と死・・・・・

 

私には死ぬ自由さえ無くしてしまった・・・・・・・。

死ねない事がこんなにも苦しいとは・・・、今までの生活では考える事はなかった・・・・・・・。

ただ容姿に任せて街をぶらついていれば男が群がり、性欲、金欲、自尊欲などは簡単に満たす事

ができた。ただ一つ・・・・、『愛』を除いては・・・・・・・・。

この身体が満員電車から開放され、前へ、前へと歩き続ける・・・・。ある建物の前で足が停まる・・。

・・・・・・・ここが今日『私』が働く所か・・・。  会社の中に入りタイムレコーダを打つ・・・。

案の定周りの反応は先ほどの満員電車内の人達と同じものだった・・・・。

私は速攻で会社内のシャワー室に投げ込まれ久しぶりに汗を流した・・。

ああ・・、汗を流す事がこんなにも気持ちいい事だったなんて・・、今まで気がつかなかった・・・。

着ていた服も異臭が漂っていた為に体系が同じような同僚が渋々貸してくれた。下着も・・・・。

容姿からもそうだと思ったけど・・、あいつは本当に駄目社員だったみたいだ・・・・。

勝手に仕事をするあいつは、私がひいき目に見ても能無しと呼ばれても仕方のないものだ・・。

一応名門女子校に籍を置いた私にはなぜこんな仕事がこなせないのか・・?

もどかしさで一杯だった・・。身体が動けばあいつ以上の働きはできるのに。

会社の人間に馬鹿だの、ただ飯くらいだの、辞めちまえだの言われないで済むのに・・。

こんなに無能だから・・・同僚から、上司から、後輩から蔑まされるんだ・・・・。

 

「よっお帰り!どうだった、会社は? ひでえとこだったろ。俺はそんな所に生活の為ず〜と行ってた

んだぜー!お嬢様で美人の美由紀ちゃんにはわかんねーだろーがな!?」

言い返してやりたがったが、私は黙ったままだ・・。

「おいっ!早く飯をつくれ!」

仕事と通勤、慣れない体で心身疲れているのにお湯を沸かしにキッチンへ入る。

「げ〜、またカップラーメンかよ〜!料理位やれよー元女なんだからよ〜。」

あいつの勝手なセリフを背中で聞き、湯を沸かしカップラーメンに注ぎ込む。

「しゃーねーな〜。」あいつは呆れながらもカップラーメンをがっついて私の身体へと流し込む・・・。

その姿をあいつの身体の私がぼーと見つめている・・・。

あいつがわたしに向かいリモコンのスイッチを押す。

あいつの身体が私と同じ食い方でラーメンをむさぼる。

「ぎゃははははははは!図体と顔に似合った惚れ惚れする食い方だぜぇえ〜!」

私はこんなひどい食べ方なんかしない・・・・。みんなあんたの仕草じゃないか・・・。

「明日はコンビにでなんか買ってこいよっ!いつもカップラーメンじゃ味気ねーからな!」

 

その日から私はあいつとして会社に行き、仕事をこなす。毎日毎日ロボットの様に動き回る・・・。

あいつの『美由紀』は毎日遊び歩き、好きな事をして、好きな食べ物を食べ、惰眠を貪った・・。

そう云う生活が半年位過ぎた後、お互いの身体にかなりの変化が見られた・・・。 あいつの

身長170位の身体に体重100キロ位だった脂肪の塊が半分位の50キロ代まで減ってしまった。

禿げ上がった頭頂部にもなぜか毛が生えてきてあっという間にふさふさになり、

歳相応の外見に変わってしまった。顔はそんなに見栄えの好いものではないがスリムになった体、

ふさついた髪で初対面の女性でも拒否反応を見せられる事は無くなった。

仕事もあいつの能力以上の事は「システム R」によってできない筈なのだがわたしの知識と行動

が体に反映しはじめ、並以上の仕事をこなせるようになっていた。

そうなると周りの反応は現金なものである。上司はあいつの私を褒め称え、同僚からも友達扱い、

後輩からは相談を持ちかけられようになり、異性からもかなり評価が上がった。

それに比べわたしのあいつは・・・・。

好きなものを食べ、街に繰り出しては遊び、酒をかっくらい、男を漁り、部屋に帰って来て寝捲くる。

その生活の所為で身長165センチ、体重47キロだったわたしの体は、体重が倍になっていた。

そんな醜く肥えた体では相手をする男など皆無に成り、あいつの性欲を満たす奴は『私だけ』

になってしまっていた・・。

「くそっ!くそっ!こんな筈じゃなかったのに・・。もっと輝く人生が続く筈だったのに・・・・!」

あいつの私がリモコンを押す。

「おらっ、こんなんなっておめーは、おもしれーだろ〜なぁ!だがな・・おめーにも、この俺が居る限り

幸せなんかこねーからよっ!たまにはおめーの気持ちも聞いてやるっ!話してみな!!」

私を支配していた「システムR」が解除される。

「別に・・・・・・、話す事なんかないよ・・。話したとこで・・どーにもなんないから・・・。」

あいつが側にあったカンビールを私に投げつけるが外れて後ろの壁に当たり、床に転がる・・。

「へっ・・・。話す事がないぃぃ!へっ、こんな事をされているお前があああ!恨み事一つ無いわけが

ないだろぉおおお!こんなチャンスは二度とないぞっ!俺に云いたい事を言ってみろぉおお!

恨みつらみを心の底から吐き出してみろぉおお!」

「もう・・元の体に戻れないのはわかってるし・・、選択の自由も無いのもわかってる・・・。

あなたが会社でどういう扱いを受けてきたかもわかった・・・・。」

「へっ・・どんな扱いか・・・・・!?すげえもんだったろ・・・・・。」

「確かにひどい扱いだったけど・・仕事が人並みにこなせるようになった今は普通の人として

扱われてるよ・・。」

「気に食わねぇえ!なんでお前は「俺」なのに!俺以上の事ができるんだっ!言ってみろぉっ!」

「あなた以上の働きをしたわけじゃない・・。あなたが・・ただ自分の能力を使わなかっただけ・・。

現に『システムR』は作動していた訳だし・・。わたしが自由に動いたんじゃない・・。」

 

「見捨てるのか・・・・・・・・・・・・・・・・?」 あいつがそう吐き捨てると目から大粒の涙を落とし始める。

「俺を・・・本体である『俺』を・・・・・捨てるのか・・・・・?」

「そんな事できる訳ないじゃない・・・・。その・・へんてこなリモコンがあるんだから・・・。」

 

「へっ・・・そうだよな!そうだ・・・!そうなんだ・・・・!これがある内はお前は俺の成すがままだ!

かっかっかっかっ!そうなんだよなぁ〜!おめ〜は俺の操り人形に過ぎないだよなぁあ〜!くくっ!」

 

数分間気が触れたように笑い続けたあいつは一瞬真顔になるとコントローラーを壁に投げつけた!

コントローラーはバラバラに砕け散り、破砕チップと化す・・・・。

 

「なんで・・・・、なんで壊したの・・?それが無いと・・・・・・・」    私は信じられなかった・・。

私とあいつを繋ぐ唯一の手段であるコントローラーを『あいつ』自身が自身の意思で破壊した・・。

 

「あ〜あ・・・・。こんな筈じゃなかったのにな・・・。美由紀が俺になって・・破滅する様を見ながら俺は

のうのうと「女の子」を味わって行くつもりだったのに・・・。『グレート・トランス・オペレーション』装置も

完璧じゃなかったと云う事か・・・・・。 『システムR』は俺以上の事ができる筈は無いのに・・・。

美由紀が俺に入って俺以上の事ができるようになるとは・・・。いや・・俺自身が自分の能力を

引き出せなかったと云う事か・・・。それじゃただの怠慢じゃないか・・・、あははははははは・・・。」

 

美由紀の体のあいつが力無く笑いつづける・・。

 

「どうする・・・・・?」

「えっ!?」

「コントローラーが無くなった今、お前は自由になった・・。自由と言っても美由紀の体には戻れない

がな・・・。その「俺」の体でなにをやるのも「美由紀ちゃん」の勝手さね!

もちろん俺の体を消すのもよし・・、美由紀の体・つまりは「俺」を殺すのも良し・・・・。

もう・・俺にはなにをするのも嫌になっちまった・・・・。これからの事は・・・美由紀ちゃんに任すよ!」

 

「そう・・・・・・。もう私は自由なんだ・・。」

 

「ああ!外見以外はなっ!入れ替りも俺と美由紀ちゃんとは契約上できない事になっている・・。

無理にやろうとすれば・・・、無理に『組織』に接触しようとすれば・・確実に消される・・・・。

生活するんだったらその外見で生きていくしかない・・・。」

 

「そうなの・・・・。」

「俺を恨んでいるか・・・・・?」

「うん・・・・・、殺したい程ね・・・・・・・。」

「じゃあ・・・殺せばいい・・・・。そうしてくれると気が楽になる・・・・・。」

「じょーだん・ぽいっ!!これから私は生きていくんだから、殺人なんてまっぴらご免よっ!」

「俺は・・どーしたらいいんだ・・・。」

「自分で考えてよぉ!私は自分自身、どう生きて行くかで頭一杯なんだから!あなたも女として

がんばって生きていきな・・・。」

あいつは壁に寄りかかり、口を半開きにし、涙を流し続けた・・・。同情なんかしてやるもんか・・・。

 

 

それからの私は会社での仕事も人間関係もそつなくこなし、ある程度責任ある地位まで貰った。

男として順調に過ごし、毎日楽しい日々が続いた。

会社での地位を高める為に資格が必要になり深夜アパートの部屋で勉強していると・・・・・・、

 

「はい・・、これ・・・。」   振り向くと美由紀がコーヒーとサンドイッチをお盆に載せ立っていた・・。

「あ・・・すまない。」   私は差し出されたお盆を机の上に置き、コーヒーを口ですする。

「大変ね・・・!?」

「ああ・・・、仕方ない・・。給料をより貰うには資格をとってもっと上に行かないとな・・・。」

「資格・・取れそう・・・?」

「ああ!お前とお腹の子の為に、是が非でもとってやるさっ!!」

「がんばってね!お父さん!きゃっ、言っちゃったぁ!」

美由紀が恥ずかしそうに顔を赤らめ、キッチンに逃げて行く・・・・。

俺はその後ろ姿を見て苦笑いを禁じえなかった。

あの後、あいつは私と同居し続け、お互いの体通りの性格になっていった・・。

あいつは美由紀になっていき、私はあいつになっていった・・・。

そして、男と女の仲に成り、子供が生まれた暁には籍を入れようと思っている・・・。

 

私とあいつの間には・・もう・・・『愛』しか存在しない・・・・・・・。

 

                                                  おわり


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こんにちは、たかしんにです。みんみんさんの新春特別企画に僕も兜を着て攻め込みました。

かなりダークなモノが集まると思ったので僕は過激な模写を避け、ほのぼの路線で攻めました。

迫力は無いと思いますが「おせちを吐かない」で読める、唯一の作品になったかも・・・??

GTO第九幕を書いてみて、やはりjokerさんの大きな背中が思い浮んでしまいますう!

自分の未熟さが身にしみました・・・。

jokerさんの顔に笑顔が戻る事を祈り、この作品を送ります。がんばれ joker さん!!

 

・この作品はjokerさんの「GTO」の二次創作作品です。

・この作品においてだけ、たかしんにに著作権があります。



                                              

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