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【投稿作品】それぞれのラストシーン

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じょーかー

第七幕



 

「ご飯を・・・食べさせてください」

やっと喋る機会を与えられても、アタシは、その一言を喉の奥から搾り出すだけで精一杯だった。
どんなに叫んでみても、アタシの汚く変わってしまった声では誰の耳にも届かないようにされてしまっている。

アタシは眠りたかった。
ずっと見続けている悪夢から覚めることは無いと分かっていても、自分の意思で眠ることさえ許されなくなってしまったから。
あたたかい布団でグッスリ眠りたかった。

アタシはお風呂に入りたかった。
アタシのカラダから発せられるオヤジの体臭が、どんなに洗っても落ちないものだと分かっていても、汗とオヤジの汚いものでベタベタになったカラダを綺麗にしたくて堪らなかった。

アタシは・・・

アタシは元に戻りたいっ!!!

「そういえば何も食べさせてなかったなぁ。まぁ、そのブクブクのカラダじゃあダイエットに丁度いいかもしれないけど、かと言って栄養失調かなんかで死なれちゃあ詰まらんからな。よし!じゃあ何か作れ!!冷蔵庫に入ってるもんで適当に作ってもいいぞ。俺は出前でもとるからさ。ま、自分の餌は自分で作れや」

オヤジが言うと、アタシのカラダはノソノソと立ち上がってキッチンに向かっていった。
陽子が帰るまでの間、ずっとクローゼットの中で正座をしていた脚は痺れ切っていたけど、オヤジの命令に忠実に動くことしかアタシには出来ないのだ。

アタシは料理なんてしたことがない。
結局、買い置きのカップヤキソバにお湯を入れるぐらいしか出来なかった。
アタシは、オヤジから許された範囲内では自分の意思で動くことが出来る。
でも、その目的以外のことは出来ないようだった。
何故ならアタシは、ほとんど使ったことの無い包丁を手にすることが出来なかったから。
料理を作るために包丁を手にすることは出来ても、あのオヤジを殺してやろうという意識がアタシの中にあったからだろう。

あのオヤジを殺してアタシも死ぬ。。。

もう、そうするしかないと思った。
このままではオヤジはアタシの大切なものを次々と奪っていく。。。
陽子は帰り際、涙を流していた。
だって、親友のアタシとあんなことになってしまったんだから・・・・・
ケータイの中にはアタシの大切な人たちの番号は全部入っている。
リョーコも、ヨシリンも、サリナも・・・勝巳くんのことも。。。。。

「サイジョウカツミって言うのは彼氏か〜?」

あまりのタイミングの良さに、アタシはカラダが凍りつくかと思った。
それでもアタシの今のカラダはピクリとも反応せずに、ヤキソバのお湯を流しに捨てる。

「答えろよ!彼氏なのか?」

「はい。彼氏です」

アタシの口から勝手に、そんな言葉が漏れた。

「よーし!んじゃあ電話しよーっと☆」

『やめてっ!!!!』

アタシは心の中で叫んだ。
それでも表情ひとつ変えずにソースをかけたヤキソバを掻き回している自分が惨めでならなかった。

「おー!キミがカツミくんかぁ?ミユキちゃんだけどさぁ。いやいや、そんなことどうでもいいんだよ。用件は簡潔でね、もう、お前みたいな奴には愛想がつきたから別れるってことになったから」

Pi

オヤジは一方的に言うと電話を切ってしまった。

これで勝巳くんも失ってしまった。。。。。

「お!何だよ〜。ミユキちゃんは料理もロクに出来ないのか?!カップラーメンじゃないか。さあさあ、こっち来て食べなさい。そこに座って。疲れただろ?俺なんかピンピンしてるけど、そのカラダじゃあキツイだろう。メシぐらい落ち着いてゆっくり食べなさい」

ヤキソバを持ったまま直立不動だったアタシは、ようやく落ち着いて座ることが出来た。

こんな最低なヤツなのに・・・今のアタシにはこいつが全てだから・・・・・アタシはもう、こいつ次第だから・・・・・・・・・・何かそんな優しい言葉が少し嬉しく感じたのが許せなかった。
前にやってたテレビで言ってた。
誘拐犯との間で恋愛感情が生まれてしまった女の子の話。
アタシは絶対そんな感情を持たないけれど・・・・けど・・・・・アタシはもう、この変態オヤジを自分の主として認め始めてしまってるのかもしれない。
自分の意思では何も出来ないのだから。。。。

「よしよし。ゆっくり食べていいんだぞ・・・・・手で!!」

そんなアタシの考えは、オヤジの冷徹な一言で一瞬にして消え去った。
アタシは持っていたオハシを床に放り出すと、ヤキソバを手で掴んで口の中に放り込んだ。

「あはははははは!いい格好だぁ!お似合いだぞオジサン!!ぶふふっ。ほら!もっとがっつけ!!もっとバクバク食え!!!」

アタシは口の中にどんどんヤキソバを詰め込んでいった。

もう・・・・・死にたい

「ふふふふふっ。面白いなぁ、このオモチャ。そのままディナーを楽しみながら聞いてくれよミユキちゃん。カツミくんのことは悪かったな。俺はギャルの肉体を手に入れて大満足だが、男とセックスなんて気持ち悪くてとても出来んからな。はははっ。でもまあ、それだけじゃないんだ。せっかく手に入れた第二の人生だ。そりゃあ毎日毎日レズレズオナニーライフを楽しむつもりだが、ぼちぼち前田美由紀としての人生を俺が再設計し直そうと思ってな。ふふっ。いよいよ本格的に俺様のギャルとしての毎日が華々しく幕を開けるわけだよ。くっくっくっ」

だめ・・・・・・そんなことさせない

「う〜んっと、この資料によればキミは今年の春に女子高を卒業したばっかりってことになってる。むぅ。残念だなぁ。やりたかったなぁ〜!女子高生っ!!お!制服って残ってるか?高校の制服!」

「はい。押入れの中に締まってあります」

「あはははは!本当か?!よし、明日は、それを来て街を歩こう!ひひひひひっ。おっと、そんなことは後回しで・・・・いやいや、気になるな。ぶふ。むしろ気になって仕方無い。それってよ、セーラー服かい?」

「いいえ。ブレザーです」

「おほほほほほほほほっ。そーかそーか。俺はブレザー党なんでなぁ。へへ。よしよし、それは明日のお楽しみとしよう。ふふふっ。ついでに聞いちゃうけどルーズかい?」

「はい。スミスのゴム抜きは今でも寒いときは部屋で履いたりします」

「あはははは〜。おっといけねぇ!そんなことじゃなかった。え〜っと・・・何の話だっけか?」

「アタシから奪った前田美由紀としての新しい人生設計についてです」

「おお。そーだったそーだった」

アタシは自分の意思に反してオヤジの声で、必要以上のことを答えてしまう。
改めて、このシステムRとか言う肉体交換機の恐ろしさを実感していた。

「俺さ、学校行こうと思ってるんだよな!中卒なもんでよ。それにイジメられてばっかで、まともな青春って送ってなかったんだよなぁ〜。だからさぁ、このピチピチのボディで送る学生生活ってヤツが、どんなもんだか経験してみたくってな。ふふっ。楽しいんだろうなぁ〜。学校行けばレズの相手にも困らんだろーし。ぐふふふ」

もう・・・・・だめだわ。。。。。

「そこでだ、俺は説明書を読んでて、また面白い機能を発見したんだ!!」

えっ!!!!!!

「むふふふふ〜っ。今度のはスゴイぞミユキちゃ〜ん☆」

これ以上・・・・これ以上アタシをどうするつもりなのっ!!!!!

アタシは、オヤジの次の言葉を聞くのが恐しくて堪らなかった。

それでも・・・耳を塞ぐことは出来ない。

 

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