【本編】プロローグ第一幕第二幕第三幕第四幕第五幕第六幕第七幕第八幕

【投稿作品】それぞれのラストシーン

たかしんに氏たこ氏あさぎり氏第9幕&あさぎり氏第10幕猫野丸太丸氏 ・うさ氏英明氏フレッシュイア氏

作 英明

 

「俺は高畑康夫、41歳、会社員、独身、一人暮らしです。しゅ、趣味は読書です」
自己紹介してみろ、という言葉に応して発したアタシの言葉だ。
少しおどおどした 口調で自然に答えていた。
これが今のあたし……名前も歳も職業も、そして、性別、そして‥‥‥‥‥‥身体も。

「よし、合格だ。まだ、俺は名前と職業しか教えてないからな。クッ、クッ、クッ、クッ、趣味は読書か、よく言うねえ。電車の中や、ホームのゴミ箱からあさったエロ雑誌しか読まないくせに。まあ俺は自己紹介の時にはそう答えることにしているけどな」 
アタシの身体のオヤジはせせら笑うと、何かを思いついたのか、到底アタシとは思えないあたしの顔でにやついた。

「女子高生は好きか?」

「はい、好きです」

「では、これはどうだ?興奮するか?」

オヤジは少し首をかしげ上目づかいでアタシを見て身体をよじらせて、いかにもオヤジが好きそうなポーズを取った。 

「はい、興奮します」

「ククッ、サービスだ。いつもしてることをしてみろ」

オヤジはタイをほどき、ボタンをはずすと胸をはだける。
すると、アタシはスラックスとブリーフを脱ぎ始め、あれよあれよという間にアタシの股間のモノはあらわになった。
そして、すでに膨張していたアタシのモノを右手でしごきだす。

(イヤッ、こんな事したくないのに!)

「はあ、はあ」

意に反して、手の動きは激しくなり、オヤジの、いえ、アタシのいやらしい声がもれる。

「誰が見ても、薄汚いオヤジが可憐な女子高生を見てオナッている図だぜ」

泣き叫びたかったが涙は出ない。
替わりにうめき声が出るだけ。

(気持ちいい、気持ちいいのは親父の感覚?アタシの気持ち?)

自分のみだらな姿を見て、自分の股間のそそり立っているモノをしごいて、感じているなんて!こんな!こんなの!

‥‥‥‥‥ ‥‥‥‥あたしの心を壊しながら、男の欲望が飛・び・出・し・た‥‥‥‥‥

「俺は別に命令したんじゃない
オートリアクションシステムというのは、たいしたもんだな。しかし、元の自分の身体とはいえ、親父のオナニ姿はおぞましいな。
クッ、ヒャ、ヒャ、ヒャ、今やお前がその醜いオヤジなんだよ。お前の名前は?俺は誰だ?俺の身体を見て何をしたんだ?」

「俺の名前は高畑康夫、あなたは前田美由紀です。あなたの身体を見て興奮して、俺のペニスをしごいて射精しました」

「ふっ、ふっ、ふ、わっ、はっ、はっはっはっはっはっ」

 

 

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥  あれから3週間ぐらい経ったのだろうか、前田美由紀だったのは遠い過去のように思え、本当にアタシは前田美由紀だったのかという気さえしてくる。
オヤジとして過ごした3週間は最悪だった。
確かにオヤジに操られていた時の方が、肉体的にはつらかった。
また、気持ち的にも、あたしが醜いオヤジにされて、アタシになったオヤジが、いいようにアタシの身体をもてあそぶのは耐えられないことだった。 
しかし、オート何とかというシステムで、高畑康夫というオヤジとして無理やり生活させられるのは、それ以上に悲しいことだった。
周りの人間すべてが、アタシを高畑康夫として扱い、親父として蔑む。
あたしはそれを否定することもできずに、アタシの意思とは関係なしに高畑康夫として生活する。
まだ、オヤジにもてあそばれていた時の方がましだったかもしれない。
オヤジがアタシの正体が前田美由紀だと知っている分だけ‥‥‥‥‥  

この3週間、アタシはオヤジの悲哀を嫌というほど味わった。
会社では後輩からは「さん」付けで呼ばれるものの、馬鹿にした響きが含まれている。
任される仕事も、蛍光灯の交換とか、苦情電話の応対とか、コピー機の紙詰まりの処理とかいったものばかりだった。女子社員にさえ、コピー取りを頼まれたりする。

しかも、陰では「汚い、気持ち悪い」と聞こえるように言われいる。 
通勤電車や街の中では、アタシが近づくと、若い女の子たちは会話を中断し、汚い物を見るような目をして遠ざかってしまう。 


銭湯には3日に一度しか行かない。
オヤジの臭いを洗い流したかったけれど、臭さが落ちるわけもなく、また、丁寧に洗わせてもくれない。そして何より、アタシの身体が醜い事を実感させられるのが悲しかった。

 
部屋に帰ると、何もなかった。あるのはテレビとオヤジの臭いだけだった。
オヤジとしての必要最低限の生活しかさせてくれなかった。 
ただ、オヤジとして生活していくことで、今まで見えなかったものが見えてきた。特に目に付いたのは、若くて綺麗ということだけで、のさばり歩いてる若い女の子たちの放漫さ。
オヤジがアタシを憎んだのがわかるような気がする。
そして、アタシがアタシだったころ、感じていた空しさが何だったのかさえ、見えてくるような気がする。
もちろん、アタシの身体を奪ったオヤジを許したわけではないけれど‥‥  アタシの心の奥で何かが変わってきている。
それが、アタシの心までもオヤジの色に染められてきたためなのか、生きていくうえで何が本当に大切なものかを考えるようになったためなのか、今はまだわからない。

‥‥‥もう元の身体に戻るのは無理かもしれない。
でも、このままオヤジロボットとして生きていくのは嫌だ。
70歳まで生きるとして、あと約30年、せめてオヤジとしてでも自分の人生を歩んでいきたい。 
そして、これはどうでもいいことだけど、もうひとつ気づいたことがある。
毎日がワンパターンということ。上司のいじめ方も、後輩の蔑み方も。
そして、当然アタシの反応も。

 

 

‥‥‥‥アタシの周囲だけでなく、オヤジというオヤジの目がどこかうつろ。

元気なのは、若い女性だけ、しかも、かわいい綺麗な女性だけ。

アタシの目には彼女たちがオヤジに見えてしかたないのです‥‥‥‥‥

 

 

 

 

〈あとがき〉  

畏れ多くも、ジョーカーさんの作品の続きを書いてしまった。みんみんさんに頼まれては嫌と言えないよねえ。
こんなんでいいのかと言う思いがあり、こんなんでいいやという気持ちもある。私としては、他の作家さんがどう書いたかが気になる、というより、楽しみ。 これは、何でもそうだけど、楽しみたかったら、その事柄をよく知ることです。今のプロ野球には興味はありませんが、なぜ、プロ野球が面白いのかと言うと、キャンプの話題や、選手のキャラクターや年俸、監督の個性などなどを、よーく知っているからなのです。もちろん、野球自体も面白いスポーツですが、試合に現れないもろもろの事を知っているとより面白いですね。 私は作品の落ちはひとつだけだと思っています。
これは、一人につきひとつということで、10人が書けば10の結末があるのは当然です。
今回は落ちはすんなり決まりましたが、落ちが自分の中で二転三転することはよくあります。
そして悩んだ末、ひとつを選ぶのです。  
アメリカ映画でパイロット版(試作品)で落ちをいくつか作り、一番観客に受けたのを採用することもあるそうです。邪道です。日本のテレビドラマでも視聴者の反応を見ながら結末を決めることがあるそうです。わたし的には邪道です。 最後に、みんみんさん、企画、お疲れ様でした。                                     英明

inserted by FC2 system